松木さんの家には、見たい図面があってお願いしたのですが、それで訪ねて行ったら、明治の洋風建築の図面、設計図面ですね、それから建築に当たっ時の帳簿(ちょうぼ)類など、大工関係文書がありました。 つまり大工関係の図面、現場における帳簿類、それから仕事を請(う)けた時の契約(けいやく)ですね。
帳簿にもたくさん種類があります。 その中で、大工さんが必ずつけるのが現場における出費、いわゆる出納(すいとう)帳です。 誰々(だれだれ)の仕事をし、いくら払ったという、出費に関する帳簿類です。 例えば、出かけて行って仕事をしますから、そこには飯場(はんば)があり大勢の大工さんが詰(つ)めかけて仕事をします。 そうすれば味噌(みそ)も必要、米も必要、豆腐(とうふ)も買います。 そこまで入った帳簿が記されてます。
もっと建築的な情報には、木積(きづみ)、木取(きどり)と書いてありますが、材料の注文書ですね。 さらに、その材料をのこぎりで切った時に記録する、木挽(こびき)帳というものがあります。
また、設計の分野があります。 設計の分野では、どの仕事にいくらかかるかという試算をした資料があります。 これは木積書といいます。 さらにその木積から、実際に仕事をした時にいくらかかったかという、人工(にんく)人員の計算書もあるわけです。 大工関係資料は非常に幅(はば)が広いのです。
さらに、もう一つの資料があります。 これは江戸(えど)時代のものですが、大工の間に揉(も)め事が起きた時の調停に関する資料です。 大工仲間では、お互(たが)いに揉め事が起きないように取り決めをします。 下山の場合には太子講(たいしこう)の取り決めというのが、大工仲間のお互いの約束事になります。 その取り決めの内容によって揉め事を処理します。 それをさらに信仰(しんこう)の上でまとめるのが太子講の仕組みです。 これが大工関係の協定に関わる仕組みです。
今回最初に松木さんのところに訪ねて行った時に、この図面と木積の関係、つまり明治期の建築に関わる帳簿類がばさっと出てきて、これだけでも唖然(あぜん)としました。 |