…往年文化三年丙寅(ひのえとら)の冬十月、図(はか)らずも木食行者上人来入せり。 嘗(かつ)て行者の徳名を聴く、則(すなわ)ち東海道甲国の産にて日向州国分寺の前住大上人なり。 容貌を視るに顔色憔悴(しょうすい)して鬚髪雪の如く白し、乱毛螺(にな)の如く垂る、身の長(たけ)六尺なり、壌(つち)色の衣を著、錫(しゃく)を持つて来り立つ、異形(いぎょう)の物色謂(い)ひつ可(べ)からず、実に僧に似て僧に非(あら)ず、俗に似て俗に非ず、変化(へんげ)の人かと思ひ狂者の惑ふかと疑ふ。 先師見て問ふて曰(いわ)く子は何人(なんぴと)ぞや。 行者曰く、諾、某(それがし)は木食五行菩薩なり…
柳宗悦「丹波に於ける木喰佛」より
清源寺十三世佛海禅師著「十六羅漢由来記」
(原文は漢文、柳が和文化したもの)
*さらに一部の漢字を現代語表記にしました。 |