身延の民話について
このサイトに掲載(けいさい)している187話のお話のうち、身延町内の地名や地区が特定できるものは179話です。これらのお話に身延ならではの、またそれぞれの地区(旧下部町、旧中富町、旧身延町)ごとの特徴(とくちょう)や傾向(けいこう)があるのでしょうか?
ジャンルから見てみると…
お話のジャンルの分類法はひとつではなく、時代や研究者によりさまざまです。このサイトでは次の10のジャンルに分けてみました。
言い伝え
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神仏
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動物
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自然
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怪異
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不思議
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由来
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人物譚
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悲話
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笑い話
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ところが、ひとつのお話をひとつのジャンルに対応させることは、意外と難しいことです。内容の捉(とら)え方により複数のジャンルにまたがることもあり、いくつかのお話が合わさってひとつのお話になっていることもあるからです。見方によっては違うジャンルに属(ぞく)するというお話はけっこう多く、このサイトでのジャンル分けに疑問を感じるものもあるかも知れません。
このような理由からも、お話の傾向をジャンルから読み取ろうとすることは有意ではないかも知れませんが、ジャンル別あらすじ一覧を見るとわかるように、「神仏」に分けられたお話の数が全体の2割に相当し、ほかのジャンルのものよりずっと多いことがわかります。ただし、これがすなわち身延町の民話の特色、とは言えず、また旧町ごとの目立った特徴も見られませんでした。
次に、キーワードから見てみると…
このサイトで取り上げた9つのキーワードのうち、7つは身延町との関わりの深いことがらです。加えて一般的なものとしての「杖立(つえたて)伝説」と、歌や呪文(じゅもん)、言葉の遊びが含(ふく)まれるお話にもキーワードを設定してみました。個々のキーワードにどのようなお話があるかは、キーワード別あらすじ一覧を見てください(ひとつのお話に複数のキーワードがあてはまるものもあります)。
身延町関連のキーワードにあてはまるお話を数えてみたところ、旧町ごとの特色が少し見えてきました。
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日蓮聖人
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身延山
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武田信玄
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金山
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富士川
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下部温泉
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西嶋和紙
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身延町全体 |
14 |
11 |
12 |
4 |
11 |
5 |
1 |
旧下部町 |
1 |
- |
6 |
3 |
- |
5 |
- |
旧中富町 |
2 |
1 |
3 |
- |
8 |
- |
1 |
旧身延町 |
11 |
10 |
3 |
1 |
3 |
- |
- |
まず「日蓮聖人(にちれんしょうにん)」「身延山」ですが、このお話が目立つのはやはり旧身延町です。日蓮聖人御入山(ごにゅうざん)にまつわる話や、このあとに取り上げる「杖立伝説」が多く見られます。
「武田信玄(たけだ・しんげん)」のお話は、3つの町それぞれに見られましたが、旧下部町に目立ちます。旧下部町にはさらに、「金山(きんざん)」と「下部温泉(しもべおんせん)」のお話が複数あり、ともに「武田信玄」とのつながりがあるキーワードです。
一方、「富士川」のお話が多かったのが旧中富町でした。富士川を舟で往(ゆ)き来していた時代のお話や、水害、水難にまつわるお話があります。
各地区とも、今に伝わる町の歴史や産業、観光に関連するものが民話としても多く伝わっている、ということがわかりました。
類型的なお話はどうだろう?
杖立伝説
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キーワードとしては、上述(じょうじゅつ)の地元密着(みっちゃく)のものとは別に、一般的なものとして「杖立伝説」を取り上げてみました。杖立伝説については、「類型的なお話のこと」の「椀貸淵(わんかしぶち)」のページでも触れていますが、徳や位(くらい)の高いお坊さんや武将(ぶしょう)が杖を地面に突き刺(さ)したところ、それが根づき大木(たいぼく)になった、あるいは泉(いずみ)が湧(わ)き出た、などというものです。
身延町の杖立伝説は全部で6話ありました。5話は日蓮聖人(旧身延町4話「桜清水(さくらしみず)」「榧の木峠(かやのきとうげ)」「うば清水」「さかさいちょう」、旧中富町1話「年越(としごし)の松」)、1話は旧下部町の日有上人のお話(「乳の木さま」)でした。
「杖立伝説」以外にも、全国各地で語られる類型的なお話のうち、次のようなものを身延町のお話にも見ることができました。
類型的なお話 |
身延町に伝わるお話 |
建長寺のたぬき和尚
けんちょうじのたぬきおしょう |
建長寺さん
建長寺様
むじなと犬
たぬきがかいたといわれる絵 |
椀貸淵 わんかしぶち |
お地蔵(じぞう)淵 |
蜘蛛淵 くもんぶち |
蜘蛛淵 |
言い負け狸 いいまけだぬき |
てうちてち |
狐の尻あぶり きつねのしりあぶり |
きつねと馬方(うまかた) |
崖の悲しいお話 がけのかなしいおはなし |
おなつがれ
おとらのがれ |
これらのお話については「類型的なお話のこと」で取り上げていますので、そちらを参照(さんしょう)してください。
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