木喰上人 トップページ > 木喰上人の足跡

木喰上人の足跡

もくじきしょうにんのそくせき
[ 廻国に出るまで | 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 ]

■廻国に出るまで

 木喰上人は享保(きょうほう)3(1718)年、古関村丸畑で、伊藤六兵衛(いとう・ろくべえ)の二男として生まれました。 地元の言い伝えによると、幼いころの木喰さんは、たいそう賢い子どもだったそうです。
 木喰さんの書いた『四国堂心願鏡(しこくどうしんがんのかがみ)』に、木喰さんは14歳のときに江戸へ出たと書かれています。 「野良(のら)に行く」と言って家を出たまま、江戸へ行ってしまったのです。 江戸ではいろいろな職に就(つ)いて働いたのですが、順調だったこともあれば、うまくいかなかったことも何度もあったようです。 人々の身分があらかじめ定められていた時代でもあり、何も後ろ盾(だて)を持たないひとりの若者が出世(しゅっせ)する可能性はまず、なかったことでしょう。
 元文4(1739)年、22歳のとき、木喰さんは大山不動(おおやまふどう=神奈川県)に?語彙集籠(さんろう)するのですが、そこでひとりの大徳(だいとく)と出会います。 大徳というのは、徳のある偉いお坊さんのことです。 その古義真言宗(こぎしんごんしゅう)の大徳の話に、心を動かされ目覚めさせられたものがあったのでしょう、木喰さんは?語彙集度僧(しどそう)になりました。 私度僧というのは、正式な許しを得ずに出家(しゅっけ)したお坊さんのことです。 このときから20数年の間は、大山の地を中心に、いくつかのお寺で修行(しゅぎょう)の生活を送ったと考えられますが、詳(くわ)しいことはよくわかっていません。
 木喰さんが木食戒(もくじきかい)を受けたのは宝暦(ほうれき)12(1762)年、45歳のときのことで、水戸(みと=茨城県)にある?語彙集言宗のお寺、羅漢寺(らかんじ)で、木食観海(もくじきかんかい)上人から授かりました。 このとき木喰さんは、全国を歩いて回り修行する?語彙集国の大願を立て、木食戒を受けて、正式な出家をしたお坊さん、?語彙集度僧(とくどそう)になりました。 観海上人は、もとは栃木県との境に近い塩子(しおご)村(現東茨城郡城里町)の仏国寺の住職(じゅうしょく)でしたが、宝暦3(1753)年に羅漢寺を開山(かいざん)しました。
 ところが、木喰さんが木食戒を受けたその年の12月に、羅漢寺は火事で焼けてしまいます。 その再建に追われたためか、木喰さんが実際に廻国に旅立ったのは、羅漢寺が再建されてから3年後の安永2(1773)年のことでした。

 木喰さんの生家に語り継がれている伝説に、木喰さんが江戸に出て何年かののちに、役人となって丸畑へやってきた、というものがあります。
木喰上人の若き日 (加藤為夫さん著『富士川谷物語』より)
 元文2年(1737)の春、古関村丸畑へ、市川代官所の若い役人が検分に来たので、村の者が交代で、長塩から丸畑への坂道を駕籠(かご)で担ぎ上げた。 途中、丸畑の六兵衛が、担ぎ手を代わろうとすると、若い役人は「お前は担がなくていい」と言ったので、他の者が代わった。
 丸畑での検分が終わり、役人はある家に宿をとった。その夜ふけ、六兵衛の家の戸を叩く者があった。 戸を開けてみると、昼間、自分をいたわってくれた若い役人であった。 それが数年前に村を出たまま音沙汰のなかった、二男であることに六兵衛は気づき、二人は再会を喜びあった。
 若い役人は、六兵衛に十両を残して宿所へ帰った。 この役人が、木喰五行上人(1718−1810)の、若き日の姿だと伝えられている。 これは一つの上人讃仰譚(さんこうたん)であるが、その自伝によれば、上人は14歳で江戸に出て苦労し、22歳で相模国(神奈川県)の大山不動で得度出家し、古義真言宗の修行を続け、45歳で日本回国の大願をたて、常陸(ひたち)国(茨城県)で木食観海上人から、火食(かしょく)、五穀断ちの木食戒を受戒し、名を「行道」と改めた。
 11年間の木食苦行を積み、56歳で回国の旅を踏み出した。 関東一円からみちのく一帯を廻った彼は、安永7年(1778)、蝦夷地(北海道)に渡り、西海岸各地を2年間教化巡歴した。 このあと、回国は東海、関西、中国、九州におよび、多くの仏像をのこした。
 木喰は83歳で3度目の帰郷をし、丸畑に四国堂を建て仏像を納め、「四国堂ぼだいの道は遠くとも、近道みればなむあみだ仏」の一首をのこして、再び旅に出た。 4度目の帰郷は、91歳の時であった。
 木喰上人の回国の旅は、56歳から93歳までの37年間で、その行程は、北は北海道から南は九州の南端まで、2万キロにおよんだ。 この間、各地にのこした仏像は、千余体におよぶ。 木喰微笑仏は、庶民の生活とともに生きた、最初の仏でもあった。

次のページへ  「木喰上人入門」トップにもどる