和紙の種類 |
古代から近世まで、和紙の種類と名前はきわめて多く、時代による変化もあります。漉(す)き方や製法の違いなどの組み合わせによって、和紙の種類は数えきれないほどになります。全貌(ぜんぼう)を把握(はあく)することはとても難しいのですが、おおまかな種類別に分類してみましょう。
原料による分類
製紙が始まった初期のころの紙には、原料から名付けた紙名が残っています。すでに奈良時代の文献(ぶんけん)に記(しる)されていますが、これらの紙は必ずしもその原料だけからできているのではなくて、楮(こうぞ)などのふつうの原料に補助(ほじょ)的に加えて作られている場合も考えられます。
原料となるものから名付けられた和紙
穀紙(かじし) 麻紙(まし) 斐紙(ひし) 竹幕紙(ちくまくし) 楡紙(にれがみ) 布紙(ぬのがみ) 本古紙(ほごがみ) 葉藁紙(はわらがみ) 杜仲紙(とちゅうし) など
|
産地名による分類
平安(へいあん)時代になるとさまざまな地方での製紙が始まり、それにつれて地名を冠(かん)した紙が流布(るふ)し始めます。中にはその先駆(が)けとみられる陸奥紙(みちのくがみ)のように、檀紙(だんし)や真弓紙(まゆみがみ)などとも呼ばれ、複雑になっているものもあります。
鎌倉(かまくら)時代以降には産地名がつけられた紙名がさらに増え、有名な土地から次第に全国の小さな地域にまで広がっていきます。これは、紙を使う人の幅(はば)が広がったこと、その時代にはすでに地方の紙までが流通しやすくなっていたこと、などが理由として考えられています。
和紙の産地として著名な地域の名前がついた和紙
美濃紙(みのがみ) 吉野紙 鎌倉紙 高野紙(こうやがみ) など |
その他の小地域の和紙
杉原紙 森下紙 西嶋紙 溝口紙(みぞぐちがみ) など |
用途や形状による分類
さまざまな紙が容易に手に入るようになると、その使いみちも幅広くなって、今度は紙の形状や性質、用途(ようと)などからつけられた紙名も増えてきます。江戸時代には、そのような名前にさらに方言も加わって、多くの紙名で呼ばれるようになりました。
このように多種多様の紙名が残っているということは、現在からは想像もつかないほどたくさんの和紙が日本のいたるところで生産され、また消費されていたことを示すものであり、日本人の生活に密着(みっちゃく)していた和紙の姿を表しているといえます。
形状によって名付けられた和紙
延紙(のべがみ) 半紙 半切(はんせつ) 巻紙(まきがみ) 大杉 小杉 など |
用途によって名付けられた和紙
奉書(ほうしょ) 障子紙(しょうじがみ) 傘紙(かさがみ) 鼻紙 など |
|
|