身延の民話




【地区】
下部
旧下部町
下部地区

【ジャンル】
人物譚
人物譚

【キーワード】
杖立伝説
杖立伝説
【出典】 『下部町誌』 (下部町誌編纂委員会 1981)
乳の木さま
 ちちのきさま
 杉山有明寺(うみょうじ)開山日有上人(にちうしょうにん)は、幼(よう)にして富士大石寺(たいせきじ)八世日影(にちえい)上人の徒弟(とてい)となり後に第九世となった。荒廃(こうはい)しきった寺を維持再興(いじさいこう)する事に全力を注ぎ、所期(しょき)の目的を達したので杉山に隠(いん)せいした。

 文明(ぶんめい)14年9月、上人八十余(よ)歳となり、この世になすべき事は成し終わったので、同月23日多数の信者を集め寺のわきに生身(なまみ)を埋(う)めた。竹筒(たけづつ)を通して棺(ひつぎ)の中の読経(どきょう)が聞こえたが7日目にパッタリ止んだので、この日を命日(めいにち)にしたという。

 生前愛用した銀杏(いちょう)のつえを下山上沢寺(じょうたくじ)の故事(こじ)によって境内(けいだい)にさし立てたところ活着(かっちゃく)して巨木(きょぼく)となり、不思議(ふしぎ)なことに幹(みき)から乳(ちち)色の水がわき出た。乳の少ない婦人(ふじん)は祈願(きがん)後この水を護符(ごふ)水としていただくとう。

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