身延の民話




【地区】
下部
旧下部町
下部地区

【ジャンル】
不思議
不思議

【キーワード】
湯之奥・栃代金山
湯之奥・栃代金山
【出典】 『下部町誌』 (下部町誌編纂委員会 1981)
消えた美女役者
 きえたびじょやくしゃ
 戦国時代、毛無山(けなしやま)は、またの名を「かねやま」と呼ばれていた。山には数カ所の金山があって、金山三千軒(さんぜんげん)と言われるほどであった。

 その金山の一つ、湯ノ奥(ゆのおく)村に一番近い入沢(いりさわ)金山である時、旅役者一座(いちざ)を招(まね)いて、芝居(しばい)を興行(こうぎょう)した。役者の中に、目立って美しい女役者がいた。

 見物人がその女のことを役者衆(しゅう)に聞くと、「そんな役者はいない」と言った。不思議に思って金山の者が、その女に気をつけていると、芝居のあと、女は山の中へ消えてしまった。

 そんなことが2、3日続いたので、後をつけた金山の者が「これは魔物(まもの)だ」と、宮屋敷(みややしき)付近で、女を鉄砲(てっぽう)で撃(う)った。女の姿は消え、落雷(らくらい)のような大音響(だいおんきょう)が谷をふるわし、あたりは真っ暗になった。

 やがてあたりが明るくなると、毛無山と五老峰(ごろぼう)の間の山の頂上から、何十畳(じょう)ともしれぬ、白い大ガレが出現していた。

 このことがあってからしばらくすると、くだんの女は、西河内(にしかわうち)、早川入(い)りのある金山に現れ、その周辺の金山から、急に大量の金が掘(ほ)り出されるようになったという話が、入沢金山へ伝わってきた。

 毛無山諸金山は、反対に女が消えてから、産金(さんきん)が減りはじめたという。

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